損失の捕らえ方
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損失の捕らえ方
運用で最もまずいことは、多大な損失をこうむって運用自体を行うことができなくなることです。運用の目的は確かに「利益獲得」です。しかし、実は利益を上げることよりも重要なことは、いかにして運用を継続できるかということです。
そのために損失発生の経緯を検証し、その現象を回避していくことが最終的に目標に達する近道だともいえます。途中で運用を中断せざるを得なくなることは、運用失敗という「敗北の結果」であり、これは絶対に避けなければなりません。
多くの投資家は、高値で買ってしまったから・・・また安値で売ってしまったから、いわゆるマーケットの見誤りで損をしていると考えがちです。確かにそれも1つの要素ですが、実はもっと重要なことがあります。
それは「上手に損を出す」ことができなかったからなのです。
マーケット分析、予測の精度を上げていくことを実現できたとしても、損をしないということではありませんし、結果として多大な損失が発生するケースも多々みられます。ましてや分析能力を一朝一夕で上げることはまず不可能でしょう。
であるならば、ある意味マーケット分析よりも「上手に損失を出す」ということが重要な要素ということでもあり、これを実行していかなければ、いつかは「敗北」と言う結果を招いてしまいます。
そして「どうして大きな損をしてしまうのか?」という、いわゆる損失発生のメカニズムを理解することが重要な鍵となってくるのです。
損失発生のメカニズム
例えばドル円で、一定期間2人の投資家が売買をしたとします。
Aさんは買い専門でマーケットの上昇局面のみでエントリーしようとします。つまり上がりそうなときに買い、下がりそうだと思ったら転売します。もう一方のBさんは、逆に売り専門で下落局面を利益に転化しようとします。下がりそうなときに売って、上がりそうなときに買い戻します。
マーケットは上がりっぱなし、下がりっぱなしということはありませんから、両者とも同様に利益を獲得するチャンスがあるわけです。つまりFX取引の特徴である金利差のスワップを考慮しなければ、平等の条件ということです。
一定期間後、この二人の投資家の運用成績はどうなったでしょうか?買い専門のAさんが利益を出したでしょうか?それともBさんでしょうか?
極端なマーケット、つまり一直線な上昇や下落をしたという特別なマーケットでなければ、通常は、両方とも損をするケースが多いでしょう。
それはなぜか、ケーススタディーでAさんの判断、及び行動を検証してみましょう。
①ドル円が110.00円だったとします。Aさんはチャートの波動分析で120円まで上昇すると考え110.00円で買いました。
②その後、思惑通り113.00円になりました。Aさんは、自分の判断が正しかったことを確信し有頂天です。
③その後、さらに上昇し116.00円になりました。この時、新聞でもドル高円安が話題となっており、Aさんは、もう間違いなく120円に達するかのごとく確信し始めています。マーケットにエントリーした時のように慎重な分析もろくに行いません。
④しかしその後、114.00円に下がってしまいました。Aさんは、急激な上昇のため、利益確定などの売りで下落したものと判断し、また上がってくるだろうと軽く受け流しています。
⑤その後、112.00円になってしまいました。Aさんはすこし不安になりましたが、ここでマーケット分析をするかわりに計算機をたたいています。116.00円だった時の架空の利益計算です。その数字が気になって気になってしょうがありません。結局その時の116.00円という値段や新聞報道などが忘れられず、今処分すれば利益が出ることがわかっていても、売ることができません。
⑥マーケットは下落を続け、110.00円買値と同じになってしまいました。Aさんは、116.00円だった頃に売っておけばと後悔しています。そして、今度はせめて手数料分だけでも確保したいなどとも考えだします。
⑦ところがその後、108.00円、107.00円と下がりだしました。今売れば損になります。Aさんはその不安は隠しきれませんが、そろそろ反発しだすだろうと安易に考え、じっくり待つことにしました。
⑧その時、戦争が勃発し105.00円になってしまいました。テレビでは評論家が100円まで下がるだろうといっています。マージンコールがかかってしまいAさんは決済することに決めました。これ以上の損失は、次の自分の運用まで支障をきたしてしまいます。ただ少しでも損幅を少なくしたいと考え、タイミングを見計らっています。ただマージンコールがかかっているのでタイムリミットは明日の夕方5時です。Aさんは夜通しレートに注視しています。しかしマーケットは、そんなAさんの行動はお構いなしにどんどん下がり続けます。
⑨そんな時、瞬間で1.00円急落し、103.00円になってしまいました。Aさんは前後の見境なしに、処分してしまいました。
極端なケースかもしれません。でも、どこか身に覚えはありませんか?
下記に、①~⑨までのAさんの行動・判断と本当は「こうすべきであろう」というヒント(枠囲い)を織り交ぜ、図で示しました。

売り専門のBさんにしても値段の推移は違うにしろ同じメカニズムが働きます。
このメカニズムを打開できないからこそ、AさんBさん共に利益獲得するチャンスがありながら両者とも損失が発生するというケースが多いのです。
ここで別の例を挙げてみましょう。
先ほどと同じようにドル円を二人が同じ期間、売り専門と買い専門に分かれて売買します。ただし今回は、ご夫婦で奥さんが買い、ご主人が売りで同じタイミングで売買します。つまりまったく同じタイミングで売り買い逆の取引をするわけです。
結果はどうなるでしょうか?先ほどの例ですとメカニズムから両者とも損をするケースが多いといいましたが、このご夫婦の例では、手数料など考慮に入れないとしたら両者の結果はでどちらかが勝って、もう一方が同じ金額の損失を出すことになります。少なくとも両者とも損をするということはありません。
この二つのケースの違いは何でしょう?
それは、人間心理が働いているか、いないかということです。実はこれが損失発生のメカニズムの重要な要素なのです。
後者の例では、同じタイミングで売り買いを同時に「機械的に」行うわけですから、人間心理が働く余地がありません。
つまり、いかにしてこの心理をコントロールし、時には感情を排除していくかが大切というわけです。
投資心理
投資の目的 = 長期的な利益獲得
利益獲得に必要なこと = 長期にわたり運用成績の波を抑え、上手く損を出し、継続的に運用できる状態を保つこと。
しかし、人間心理というものは、手段であるはずの一回の運用(売買)こだわるあまり、そもそもの目的を取り違えてしまいます。そうした結果、必要な行動が取れなくなるのです。
前述の例で考えると、もし本来の目的達成の意識があれば、②~④の間で決済できるはずです。少なくとも⑤でとった行動は起こさないはずなのです。
でも、それは「言うは易し、行うは難し」です。人間ですから感情の起伏もあれば、うっかりすることもあります。常に同じ意識を持ち続け、同じ行動をとることができる強い人間はいないでしょう。
そこで大切なのは、人間心理をいかにして味方にするか、また利用するか、ということです。当然のことですが、マーケットへの参加者は人間ですから、人間心理の影響を受けるのは、あなただけでなく参加者全員なのです。
つまり人間心理は、実際のマーケットの値動きにも市場心理として影響しているということです。先ほどの例の⑨で1.00円急落したことにあてはまりますが、マーケット参加者の多くがAさんと同じような経緯行動をとり、もっと下がるですとかもうだめだという市場心理となり、とにかく売ってしまおうと思い、投げ売りが集中することによって価格が急落することです。
これをセリングクライマックスといいますが、基本的にマーケットの材料とは関係ありませんから、この時点で底値が形成されるパターンが多いのです。
すこし余談になりますが、数年前にユアン・マクレガー「マネートレーダー」(銀行崩壊~「女王陛下の銀行」と呼ばれた英国ベアリング銀行を潰した男)という映画が上映されました。この映画は、シンガポールのSGX日経225のディーラーが自分の出した損失をひた隠しに隠し、それが発覚したときは自分の所属する巨大銀行が崩壊してしまったという実話に基づいた映画なのですが、おそらく投資に興味がない人ご覧になっても、あまり面白いストーリーではないですが、ここでユアン・マクレガー演じる主役のニックの心理背景の移り変わりは写実性に富んでいて、この損失メカニズム心理描写が見事に表現されています。
絶対儲かる投資法
ここで一番簡単な利益がでる投資方法をご披露しましょう。
格言に「人の行く裏に道あり花の山」ということわざがあります。人の行く道ではなく裏の道、ここでは投資なので、大勢が買いなら売り、大勢が売りなら買いをすることをいいますが、そこには花の山があるということです。
そこで自分の周りで投資をしている人で、いつも損をし続けている人を探すのです。ひょっとしたら今これを読んでいるあなたかもしれませんが(笑)
その人と逆の売買を何の心理もいれずに機械的に行うのです。きっと最初は戸惑うでしょう。その人は普通の人で、あなたとなんら変わらない投資判断(大勢の判断)を行っているでしょうから、きっとその投資判断に共感してしまうはずです。
その状態で逆の売買を行うのですから勇気も要ります。しかし、いつも損をしている人の逆をやれば、必ず利益が得られることも事実です。先ほどのご夫婦の例ではないですが、常に逆を行えば一方がマイナスの時は、一方がプラスになるのです。
このような非現実的な例を挙げたのは、ここで私は、皆さんに大勢の逆の売買を行ってくださいというつもりもありませんし、ご自分の判断を一切無視してくださいということでもありません。ただ、人間心理を払拭するのは難しい、ということを言いたいのです。
それでは、どうしたら感情をコントロールし、損失発生のメカニズムを打破できるのでしょうか?
それが、いわゆるリスクマネージメントであり、アセットマネージメントということです。
難しそうに聞こえますが具体的には運用計画を立てたり、余剰資金を作るなど資金配分したり、売買ルールの立案をしたりということです。
マーケットの中には何一つ確実なものは存在しません。だからこそ、投資家自身の運用の柱となるマネージメントは必要不可欠なのです。

